置き屋根とは? メリットやデメリット、工事の注意点を解説
「置き屋根ってなんだろう?」
「置き屋根を使う場合の注意点は?」
置き屋根と聞いても、ピンとこない人も多いでしょう。
現在は使われなくなりましたが、日本古来の屋根の工法です。
「蔵」の屋根に多く使われていました。
置き屋根とは、土壁(つちかべ)で覆われた蔵の上に置いてあるだけの屋根です。
下部の骨組みとは緊結されておらず、屋根の重みと計算されたバランスで落ちないようになっています。
蔵は米などを守る保管庫の役割があり、土で作られている壁の厚みはおよそ30cmにもなります。現代的な「断熱材」がなかったので、蔵全体を土で覆うことにより室内の温度や湿度を一定に保っていました。
この記事では、「置き屋根とは何か」のほか、メリットとデメリットを紹介します。
置き屋根は天候などの変化から蔵を守るための構造になっています。
高い断熱効果があるとして、現代においても注目されている工法です。
置き屋根とは? メリットとデメリットをチェック
置き屋根は二重構造になっています。
1層目の屋根は「土」で埋められており、その上に2層目の屋根が骨組みごと乗っている造りです。
2層目の屋根は周りがふさがれていないので、屋根裏全体が風を通す通気層になっています。
建物の上に傘がのっているようなイメージです。
屋根が高温になっても通気層があるので屋根裏に熱がこもりません。
さらに敷かれた土が断熱材として機能しているので、室内に熱が伝わりにくい構造です。置き屋根のメリット
置き屋根には以下のようなメリットがあります。
断熱効果が高い
下地が傷みにくい
防音性が高くなる
置き屋根は、二重構造により夏場の暑さや雨の音が室内に伝わりにくいです。
通気層のおかげで湿気もたまりにくく、下地の劣化スピードも抑えられるでしょう。置き屋根のデメリット
置き屋根には以下のようなデメリットがあります。
屋根が重たくなる
費用が高い
風に弱い
屋根を二重構造にする手間がかかるので費用が高くなってしまいます。
また、屋根が二重になることで重量が増してしまうでしょう。
他にも、通気層から強い風がふきこみ屋根が持ち上がる可能性があるため、頑丈な作りにする必要があります。
置き屋根が適しているのはどんな場面?
置き屋根は断熱性と通気性を確保できるので、下記のような場面でも応用できます。
屋根の勾配を変える
鉄筋コンクリート造りの建物の屋上
それぞれ解説します。
屋根の勾配を変える
屋根の勾配(角度)がゆるいと雨の流れが悪くなり、屋根材によっては雨漏りの原因となります。
特に瓦屋根は勾配がゆるい屋根には適してないので、屋根の勾配をきつくすることが有効です。
置き屋根に替えることで、雨漏りの心配も減り、断熱性と通気性も得られます。
鉄筋コンクリート造りの屋上屋根
鉄筋コンクリートの建物の屋上防水は、定期的にメンテナンスしないと建物に雨が染み込んでしまいます。
排水口にゴミがつまり、水がたまることもあって厄介です。
置き屋根工法を用いれば、浸水による建物の劣化を改善できるでしょう。
置き屋根のリフォーム・メンテナンスにかかる費用相場
置き屋根のリフォームにかかる費用の相場は明確になっていません。
昔ながらの「土」を使った「置いてあるだけ」の置き屋根は、リフォーム費用や重量を考えると一般的ではありません。
しかし、二重構造で断熱性が高い屋根は実現可能です。置き屋根に変更する場合の費用相場
既存の屋根から置き屋根にリフォームする費用と方法を解説します。
下記は切妻屋根を想定した費用です。屋根の形によってはさらに大規模な解体も必要となります。
置き屋根リフォームに必要な工程は下記の5つです。
解体費用:4,000円~(1平方メートル)
発泡ウレタンなどで断熱:7,000円~(1平方メートル)
屋根の下地補修(1層目):2,000円~(1平方メートル)
屋根の構造を作る(2層目):100万円~(一式)
屋根材を葺く:5,000~15,000円(1平方メートル)
置き屋根に変更する場合はカバー工法とは違って通気層を造るのに手間がかかります。
断熱工事などの工程が多いため、費用が高額になるでしょう。
置くだけではなく、下部の建物にしっかりと留める必要もあります。
屋根材を瓦にすると費用が高くなります。
スレート屋根や金属屋根を選べば安く抑えられるでしょう。
置き屋根をメンテナンスする場合の費用相場
屋根のメンテナンスは一般的な屋根と変わりません。
一層目の屋根が劣化しないように上部屋根のメンテナンスはしっかりと行いましょう。
部分補修:1箇所あたり1万円~
塗装:1平方メートルあたり2,980~4,900円
1層目の屋根のメンテナンスは基本的にできないので、注意してください。
リフォームの際には下地や防水処理を丁寧に行ってくれる業者を選ぶ必要があります。置き屋根を利用する場合の注意点
置き屋根を利用する場合の注意点は下記の3つです。
施工実績がある業者に依頼する
屋根が重くなるため耐震性が低下する
相見積もりで業者を比較する
屋根だけではなく構造も変わるので、複数の業者が関わります。
置き屋根工法は高度な技術が必要なので、業者は慎重に選んでください。施工実績がある業者に依頼する
置き屋根の工事は施工実績がある業者に依頼しましょう。
構造の知識がないと工事はできません。
屋根に詳しい業者はもちろん、腕のよい大工さんも必要です。
大掛かりな工事になるので、必ず信頼できる業者を見つけましょう。屋根が重くなるため耐震性が低下する
置き屋根は建物の重量が大きく変わるので、耐震性が低くなります。
屋根が重くなると、地震による倒壊の危険が高くなるでしょう。
自宅の強度や構造も専門家に確認してから工事を進めましょう。
相見積もりで業者を比較する
複数の業者から見積書をとる、相見積りにしましょう。
できれば3社以上を比較することで、あなたに合う業者が見つかる可能性が高まります。
相見積もりでチェックするポイントは下記の4つです
契約書の押印や有効期限のチェック
工事内容や金額の詳細が記載されているか
金額が高すぎないか
諸経費は適正か(一般的に工事金額の10%前後)
押印がないものは、正式な見積書として発行されていない場合もあります。
工事内容や金額が一式表記の場合は詳細を確認しましょう。
置き屋根は複数の工事があるため比較するのが大変です。
わからないことは業者に確認し、対応を確認してみるとよいでしょう。
知識が豊富で丁寧な対応ができる業者が望ましいです。まとめ:置き屋根は日本古来の断熱工法!
置き屋根は日本古来の断熱屋根工法です。
現在のような断熱材がなかった頃に、当時の職人が考えた、高い断熱性能をもった工法といえるでしょう。
限られた「モノ」の中で考えられた工法や技術は、無駄がなく理にかなっています。
現在は建材の質が上がってきているので、特別な技術を使わなくても高い性能の家が造れます。
しかし、引き換えに、置き屋根のような日本古来の技術や工法も忘れられていくでしょう。
このほか、屋根のメンテナンスについて詳しく知りたい場合は、
「屋根のメンテナンス時期の見分け方と必要な費用相場を専門家が解説」
もチェックしてみてください。